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【船舶】イージス艦並!世界最速の大型フェリー あかしあ・はまなす 誕生背景と タンデム二重反転プロペラ推進を解説

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%82%E3%81%8B%E3%81%97%E3%81%82#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Ferry_Acacia.jpg

今日は新日本海フェリーか!いつも世話になってるぜ。太平洋フェリー、商船三井フェリーと並んで、ツーリストにとってはもはやライフラインだよな!

世界最速って新日本海フェリーってそんなに速いんだ。実際乗ってもあまり実感がないけど、どういう点がすごいの?そもそもタンデム二重反転プロペラって、、、何?

よくぞ聞いてくれました!今日は数多くある本州-北海道航路のフェリーの中でも、特に俊足を誇るあかしあ・はまなすについて旅行マニアの私が解説をして行きたいと思います!運行パートと技術パートに分かれているので、興味のあるところだけでも読んでくれたら嬉しいです。

カーフェリーについて

北海道航路の運行フェリー

旅行やドライブ好きの皆さんは一度は乗ったことがあるのではないでしょうか?カーフェリーです。特に九州航路や北海道航路は人気で、GWや夏休みになると満杯になることも多いですよね。北海道-本州間では主に、下記のような航路があり、それぞれ違う運行会社が運営しています。

航路運行船運行会社所要時間
舞鶴 – 小樽あかしあ・はまなす新日本海フェリー(SNF)21時間
敦賀 – 苫小牧すずらん・すいせん新日本海フェリー20時間
新潟 – 小樽らべんだあ・あざれあ新日本海フェリー16時間30分
秋田 – 苫小牧らいらっく・ゆうかり新日本海フェリー11時間
仙台 – 苫小牧きそ・いしかり・きたかみ太平洋フェリー9時間40分
大洗 – 苫小牧さっぽろ・ふらの (日中便)
しれとこ・だいせつ (深夜便)
商船三井フェリー
17~19時間
八戸 – 室蘭シルバークイーンシルバーフェリー7時間15分
八戸 – 苫小牧シルバープリンセス
シルバーティアラ
べにりあ
シルバーエイト
シルバーフェリー7時間45分
函館 – 青森 ブルーマーメイド
 ブルードルフィン
 ブルードルフィン2
 ブルーハピネス
津軽海峡フェリー3時間40分~4時間
函館 – 青森あさかぜ5号・あさかぜ21
 はやぶさ・3号はやぶさ
青函フェリー
函館 – 大間大函丸津軽海峡フェリー1時間30分
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/bkk/longf.htm

めっちゃ多いやん!!!!

多いですよね!毎年北海道旅行に行っている私ですら乗ったことがない航路もあります。仙台や敦賀等、途中停泊したり乗り換えで30時間超かかる航路もありますが、今回は直行便だけ観ています。数多くある直行航路の中でも、舞鶴 – 小樽は最長クラスの移動距離です。ここで着目してほしいのは所要時間です。

  • 新潟 – 小樽:16時間30分、700km => 平均時速 42km/h
  • 舞鶴 – 小樽:21時間、1060km => 平均時速 51km/h

距離の差の割に時間はそれほど変わらないことにお気づきでしょうか?実は舞鶴航路は2割ほど速いことに気づくと思います。一般道の自動車と変わらないほどの速度ですが、港に出入りしたり、徐行している時間も含めると、航行中はもっと速い速度だと言うことが分かりますよね。

まさに、この舞鶴 – 小樽航路で運行されているのが、二重反転プロペラを採用する新日本海フェリーあかしあ・はまなすです。タイトルで述べた通り、このサイズの定期運行大型フェリーとしては、世界最速になります。

世界最速

速力32ノット (約58km/h)

時速58キロと聞くと、あまり速いように感じないかもしれませんが、通常の船舶はせいぜい20ノット、比較的高速なコンテナ船で25ノット、護衛艦でも30~40ノット程度なので、1万トンを超える大型船としては最速の部類になります。(実際の速度はさておき)より小型になるイージス艦ですら公称速力は30ノットです。

ちなみに、船舶は200m を超えると海上交通安全法上では”巨大船”という扱いになり、航行に対して安全のために多くの規制が敷かれてしまいます。そのため、フェリーを含むとほとんどの国内運行船は199mに抑えて作られています。
しかしあかしあ・はまなすはそのような制約に囚われることなく、224m、1万6000tという巨体を誇り、速力、大きさ共に最大クラスです。

なお、敦賀 – 苫小牧航路を運行している、すずらん・すいせんあかしあ・はまなすとほぼ同型艦です。航路が少し短いので、速力27ノットが抑えられており、燃費が良くなっています。

新日本海フェリーと舞鶴航路・最速船誕生の背景

本州から北海道に向かう航路はたくさんあります。しかし、その中で日本海側を通る長距離航路は実は新日本海フェリーしかなく、またフェリー会社の中ではかなり後発のほうで1970年から初めて運行が始まった航路です。新日本海フェリーは他のフェリー会社と差別化する特徴がいくつかあり、建造船の仕様や運行計画にも影響を与えています。

新日本海フェリーの高速化の経緯

  1. 創立以来、長年旅客よりも貨物輸送を重視した大型のフェリーを運行しており、客室や内装が簡素な格安便としての毛色が強かった
  2. しかし、バブル期を境に旅客機能を強化、豪華な内装のフェリーが次々と運行され始められる
  3. 1996年には、敦賀 – 小樽航路にすずらん・すいせんの高速船を就航させ、西日本 – 北海道の就航時間を従来から9時間短縮、初めて21時間とした。これにより、24時間未満の所要時間での運行が可能となり、毎日定期便を運行できるようになった。
  4. これを機にフェリーの高速化が進み、現在では各社フェリーは遅くても速力20~22ノット、毎日運行が当たり前となっている。
  5. 2004年に就航したはまなす・あかしあでは舞鶴 – 小樽航路を従来から9時間短縮、24時間未満とし、この航路は2021年現在でも大型フェリーの定期運航便としては世界最速となっている。

ざっくりとした説明はこの通りです。つまり24時間以内 (往復で48時間以内) で目的地に到着することで、折返し2隻で毎日運行が可能となる。そのためには保有船の高速化が必須だった、と言えます。それまでは3日おき、あるいは3隻就航しないとカバーできなかったダイヤがたった2隻でまかなえるようになるため、多少のコストをかけてでも、スピードと積載量を重視した、高性能船を発注しよう、という考えに至るわけです。敦賀 – 苫小牧航路では速力を絞った理由も毎日運行が達成できるのに必要十分な速力を確保し、燃費を優先したためになります。

たしかにスピードを出すと燃料代はかかるし、高速船は建造費も高い。でも経営目線から見ると2隻と3隻とでは必要な乗組員の数や、停泊設備の整備費、また小型化で積載効率が低下することであまり収益にはいい影響がなさそうだのう。先行する商船三井フェリーや青函トンネルとの競争を考えた上での独自路線、思い切った判断をしたと思うぞ。

あかしあ・はまなすの特徴: 所感

(本題の前にフェリー愛を語る章です。) 管理人も日本海航路は新潟航路がメインのため、あかしあ・はまなすには数回しか乗ったことがありませんが、印象としては:

  • 他のフェリーより大きい:224mと197m、30mにも満たない差ですが、体感1.5倍ぐらい大きいです。
  • 大きいのでスピードが速いようには感じない。でも地図を見たら、たしかに速く到着したことを実感します。
  • 食事がおいしい & 比較的良心的価格食堂は新日本海フェリーが一番美味しいように思います。
  • 揺れる:日本海航路は天候が荒れやすく、天気が悪い時はめちゃくちゃ揺れます。

ただの感想ですが、一般的に新日本海フェリーは食堂が充実してる傾向にあります。また、新潟 – 小樽航路のらべんだあ・あざれあは小型のため設備は少ないのですが、代わりに大人3人がやっと入れるぐらいのサイズの”なんちゃって露天風呂”があります。

新型艦ということもあって、個人的には船内が広く、食事もおいしいすずらん・すいせんがイチオシです!揺れるのが無理な方には太平洋フェリーを推します。。。

(台風の時は風呂場が波のプールになるので、平気な人は楽しいと思います。)

管理人が一番良く乗る新潟航路:らべんだあの露天風呂
ここがすごいよ まとめ

  • 国内最大級のフェリー: 224m、16800t
  • 大型フェリーとしては世界最速:最大速力32ノット
  • 4基のエンジンを搭載し、出力も国内最強級:70000馬力

興味が出た方や、細かいスペックが気になる方は公式HPやWikipediaもどうぞ:

wikipedia
あかしあの船内

最速か、、、悪くないな。次は舞鶴までドライブしてから北海道ツーリングに行くことにするぜ!

なんだか今日はあっさりと終わったね!フェリー好きなのは良く分かったよ。揺れるのはあまり好きじゃないけど、せっかくだし今度は乗ってみようかなぁ

ちょっと、まって~!ここからが本題ですよ!あかしあ・はまなす独自の推進システムについて解説して行きます!

CRP仕組み

さて、いよいよ本題(?)です。タンデム二重反転プロペラとはそもそも何でしょう?結論から言うと、”アジマススラスター二重反転プロペラあわせ技”です。

何のことだか、全くわからんが、俺の愛車FD3Sのシーケンシャルツインターボみたいなもんてことだな!

うっ、、、りゅうたってアホっぽいことを言ってるようで、微妙に合ってたりするよね。。。

このシステムは従来から存在する2つの仕組みをうまく組み合わせ、効率(=燃費)の改善と低コスト化を同時に達成した、建造当時は世界初のシステムでした。組み合わせることによって得られたメリットは大きく、既存船から22%もの燃費改善を達成しています。15年以上前に建造されているにも関わらず、2021年現在においても、新造船に匹敵する燃費を維持しているため、いかに先進的だったか分かるかと思います。

それではそれぞれの要素を見ていきましょう。

二重反転プロペラ(CRP)の仕組み

二重反転プロペラとは、文字とおり、2つの互いに反対方向に回転するプロペラのことです。

スクリューはもちろん、飛行機のプロペラやヘリコプター、送風機、圧縮機等、幅広い機械で使われています。ジブリの映画でもよく登場しますし、見た目がカッコイイですよね。二重反転プロペラの大きなメリットは:

  • 一枚目のプロペラの空気の勢いを利用して二枚目のプロペラを効率良く使える
  • 同軸上に2枚プロペラを配置できるの省スペース性に優れる。

しかし機構が複雑になったり、振動が出やすい等の問題もあり、ある程度高性能が求められる用途に限られています。プロペラが一枚より二枚のほうが効率が良い理由については、下図を見てみましょう。

①は通常のプロペラです。プロペラに入った水は加速され、推進力となりますが、プロペラ自体が回転しているため、必ず水も回転してしまいます。この分だけ推進力は失われてしまっています。

②は二重反転プロペラですが、一枚目と二枚目はそれぞれ反対方向に回転します。”反転”とはここからきているのですね。二枚目のプロペラは一枚目で回転流となった水の流れを戻して、推進力に変換する役割があります。

③は②のそれぞれのプロペラの断面を見たものです。仮に一枚目が時計回りに回っている場合、二枚目は反時計回りになります。ここで簡略化された水の速度ベクトルを見てみましょう。

\( \vec{v_{1\theta} }\):一枚目のプロペラの回転周速とします。
\( \vec{v_{2\theta} }\):二枚目のプロペラの回転周速とします。

\( \vec{v_i }\) : 一枚目のプロペラに入ってくる水の流速:船は前に進んでいるため、大体速度+吸い込む水の速度の合計と同じです。

\( \vec{v_{11}} = \vec{v_i } + \vec{v_{1\theta} }\): 一枚目のプロペラから見た水の速度。実際の速度はViと同じですが、プロペラは回転するため、回転速度分だけ周速を持っているように見えます。

\( \vec{v_{12}} \):一枚目のプロペラから力を受けて、向きが変わった水の流速、つまり一枚目のプロペラの推進力+周速です。

\(\vec{v_{21}} = \vec{v_{12}} + \vec{v_{2\theta}} – \vec{v_{1\theta}} \):二枚目のプロペラから見た\(\vec{v_{12}}\)。外から見ると同じベクトルですが、プロペラからみるとお互いに反対方向に回転しているので、あたかも反対側から勢いを持って流れてくるように見えます。

\(\vec{v_{22}}\):二枚目のプロペラから力を受けて、向きが変わった水の流速、つまり二枚目のプロペラの推進力+周速です。

\( \vec{v_{out}} = \vec{v_{22}} – \vec{v_{2\theta}} \):最終的にプロペラから出てくる水の速度。外から見た\(\vec{v_{22}}\)。二重反転プロペラのおかげで、周速は低くなっており、その分推進力が増えるため、効率が良くなります。

最終的に得られる推進力F:水の流量が \(Q\)とすると  \( F < Q(v_{out} - v_i)\)

二重反転プロペラでは\(v_{out}\)を限りなく進行方向の逆方向にできるため、効率に優れますが、周速をゼロにすることはできません。そのため、推進力は必ず不等式になります。スクリュー/プロペラを通過した水がどのような動きをするのかについては、下記のビデオが分かりやすいです。ここではキャビテーショントンネルという装置を使って、圧力を大気圧よりも下げることで、意図的にプロペラの先端に泡を発生させて、流れを可視化しています。スクリューの抵抗の一部はこのように先端から発生する渦=チップボルテックスによるものなので、このような研究が行われているのですね。

プロペラが発生させるキャビテーションは一見ただの泡にしか見えませんが、水には圧縮性がないため、実際にはほぼ真空の状態になります。このような泡をキャビテーションバブル呼び、これが崩壊する時に発生する衝撃波でブレードが劣化したり、最悪の場合壊れていまうこともあるのです。流体機械、特に水や液体を扱うものでは開発はキャビテーションとの戦いになるのが日常茶飯事です。

アジマススラスターの仕組み

https://global.kawasaki.com/en/corp/sustainability/green_products/img/item_003_2018_01.jpg

アジマススラスターと言うのは、360°回転できる推進スラスターのことです。どのような方向でも船を進めることができるため、タグボートや作業船で使われてきました。近年では港湾への入出港やクルーズ船のような低速船でも用途が増えてきており、珍しい姿ではなくなってきました。一般的なスクリューとは異なり直接スクリューを駆動することができないため、ギアボックスや電動モーター、油圧モーター等を介して駆動することが多いです。そのため、単体での効率は一般的な軸に直結されたスクリューより劣ります。

上の落書きのように、ポッドを中心に360°回転することができ、船を進みたい方向に進ませることができます。また、スクリューのピッチ角を変更できるものが主流です。特に有名なものとしてはABB社の“Azipod”アジポッドという商標登録があり、アジマススラスターの代名詞ともなっています。詳細な構造は実際のスラスタの製造と船体への取り付けビデオが理解しやすいかと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=uSGyTK2PA80

長所を合わせた結果

https://www.mhi.com/jp/expertise/showcase/column_0006.html

これが三菱重工とABB社との共同開発で実現した、Azipodと通常推進軸を組み合わせた、ポッド型の二重反転プロペラ推進機構です。組み合わせたという点以外では新しい点はないのですが、その効果は非常に強力で、燃費/速力/操縦性に大きな改善をもたらしました。それぞれ単体と比べて得られたメリットをまとめると下記の通りです。

  • 通常の推進軸を持つ船と比べて港湾での操縦性が非常に高い
  • Azipodを舵代わりにできるため、舵が不要:水の抵抗が大幅減
  • Azipodは電動のため、微速運転時には一部のエンジン停止して電力供給のみを行う等省エネ運転が可能
  • 二重反転プロペラの推進効率が高く、燃費、速力に優れる

うまく長所を伸ばしつつ、弱点を克服した感じですよね。乗ったことがある方なら体感した経験もあるかもしれません、こんな動きも自由自在にできます。

実現における困難

ここまで読んで、意外と単純だと感じた方もいるのではないでしょうか?発想力の豊かな小学生でも思いつくかもしれません。似たようなアイデアはずっと昔から提唱され続けてきました。しかしこれまで実現が難しかった理由はいくつかあります。詳細はクレジットに詳細を載せているので、興味のある方は読んでみてくださいね。

一般論

一般的にスクリューは大きく、数が少ないほうが効率は良いです。そのため、速力を必要としない貨物船では、1軸1スクリューが基本となります。突起物が少ないという点でも、なるべく軸の数は減らしたいところです。

しかし速力がほしい、パワーがほしいとなると、スクリューが大きければ大きいほど、回転数が低く、より大トルク、巨大なエンジンが必要になってしまいます。スクリューの最大回転数は周速で決まってしまうため、大型化するとどうしても回転数が下がってしまいます。また、スクリューが大きすぎると船体からはみ出てしまい、現実的には限界があります。そのため、高速船では多少の燃費は犠牲にしても多軸化で複数のスクリューを搭載し推進力を得るのが一般的です。

特に大型旅客船では、乗客の安全のため、冗長性の観点からも2軸とすることも多いです。2つのスクリューを同軸上に配置することで抵抗は1軸程度、更に二重反転プロペラの恩恵を得られるようにもなり、二重のメリットを得ているのがCRPの特徴です。

建造コスト

2軸は1軸よりもお金がかかります。またAzipodも結構な高級品で、カーフェリーではなかなか使用するのは難しいです。ここでもタンデムレイアウトは効果を発揮します。通常の2軸に比べて1軸推進軸が少ないため、Azipod搭載による建造コストを相殺しています。また冒頭で述べた24時間で折り返し運転が可能、これを実現したことで、必要な船の数が2/3になり、高級船でも採算性が確保されました。

相互干渉による振動

タンデムレイアウトにおける一番の問題は振動です。これは通常の推進軸やAzipod単体のシステムよりも、舵と推進装置を兼ね備えたAzipod+二重反転プロペラで特に顕著になる傾向があり、また予想が難しいリスクがありました。図のように、プロペラが発生した周期的な流れ自体が、舵の機能も兼ね備えるAzipodにあたることで、大きな力を与えること、また発生渦から派生して細かい渦がたくさんできることにより、様々な部分が共振する恐れがあり、数値流体計算→有限要素解析を何度も繰り返して流れとポッドの挙動の予想が行われました。このような解析を練成解析と呼び、物体の変形と流れを同時に計算するため、正確に計算するにはかなり難易度が上がります。更には、Azipodは舵として回転するため、それぞれの角度では異なる挙動を示します。またスクリューの回転数も運転条件によって異なります。これらについても、それぞれの操舵角や回転数での解析を実施し、検証を行っています。

今日となっては当たり前となっている解析手法ですが、旅客機のフラッター(翼の異常な練成振動)を抑制したり、橋梁の共振を予想するのに幅広く使われており、フェリーでここまで綿密な検討が行われる例は少数でした。

Pod表面の圧力・流線の計算

推進プラントの複雑化

Azipodは電動モーターでスクリューを回すため、発電機の搭載が必要です。しかし必要な出力は24MW、主機(メインエンジン)並の出力が必要で、結果的に通常の2倍の4基のエンジンを搭載する必要があります。また二重反転プロペラはそれぞれ効率を発揮できる回転数が運転状況によってことなるため、常に2つの完全に独立した推進系統を協調制御する必要があります。今では当たり前となった自動車のハイブリッドシステムの協調制御ですが、建造当時はまだ初代プリウスの時代。これほど大型なハイブリッド機関自体の搭載も船舶業界では始まったばかりで、当時としては非常に先進的な制御システムが開発されました(クルーズ船でも当時は完全電動化が主流でした)。ハイブリットシステムの協調制御の難しさは、身近に触れる機会のある装置の中では最も難しいもののひとつで、最新の制御理論と多くの経験が詰まっているため、またハイブリッド機関について説明する時に記事にしたいと思います。

このように障壁を乗り越えて実現した”最速”、一見何もなさそうな機械にも多くの人達のプロジェクトXが詰まっているのです。

9時間短縮は、旅行マニアにとっては有り難いよね。そんなすごい技術が隠されてたなんて知らなかった!

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。どうでしたか?まさかフェリーにこんな工夫が凝らしているなんて、驚きですよね。もし今度フェリーに乗ることがあれば、どうやって動いているのか、揺れやすい部屋は、振動を拾いやすい部屋は?など探索しながら探究心を燃やすのも楽しかもしれません!それではまた次回お会いしましょう。

クレジット・参考記事

各船の乗船がイメージできて、よく網羅されている方のサイトです。

http://www.funamushi.jp/index.html

三菱重工技報、推進機開発の概要について:

https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F3527761&contentNo=1

<おまけ>

mathjax入れました

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