“ジュール”って何だったっけ
いきなりですが
早速ですが、みなさん以下の式を覚えていますか?忘れていたとしても、理科の授業で習ったはずですが、忘れちゃった人も少なくなりと思います。もうマスターしてる!という方はいきなり次へ進んで頂いても大丈夫です。
エネルギーの単位:1J (ジュール) = 1N・m (ニュートンメートル) = 1W・s (ワット秒)
ついにブログ始めたんだって~??見に来たよ!
なんかいきなり難しそうだね、、、
おいおい、車の話題って聞いてきたのに、いきなり【お勉強】だって??
謝らなければならないことがあります。
初めての記事が、いきなり勉強だなんて。。。
基本的にはこのブログでは高い専門性よりも、楽しさを知ってほしい、大枠を理解してほしいと言うつもりなのです。。。でもエネルギーの話だけは、今後の記事で度々登場予定で、絶対に外せないので、これだけは!ついてきてほしいと思います!
なぜエネルギーを考える必要があるのか
冒頭でいきなり数学が嫌いな人なら即閉じしちゃいそうな式を載せました。でもそもそも、どうしてここまで私は”エネルギーの説明”にこだわるのでしょうか?次の例を見てほしいと思います。
(T T)~~~~~~~~~~
手越君の身長168cmと今日の東京の最高気温30℃ってどっちが速いんだろうね!!?
(↑推しを前に全思考力が停止しているオタクの図)
どうでしょう?どっちが速いですか?はっかり言って
意味不明!
(というかもはややべーやつ、、、) ですよね。
脈絡のカオスさもさることながら、長さ、気温、スピード、つまり本質的に全く異なるものを比較しているから、もはや答え以前に質問の意味さえわからなくなってしまっている。。。そんな状態です。例えばこれが、下記のように書き換えるとどうでしょう?
- “手越君が生まれてから成長して、身長が168cmになるまでにかかった時間”
- “気象庁が観測を初めてから、東京のこの時期の平均気温が30℃になるまでにかかった時間”
- どちらのほうが長い時間がかかったでしょうか?
この場合は簡単ですよね。年や日という単位で比較ができるので、”東京の平均気温のほうが時間がかかりました”って答えることができます。私達の生活にはエネルギーは欠かせません。自然界では次のような法則があることが知られています。
本質的には、重力も電気も、どんなエネルギーも同じエネルギーなんだ。今では熱力学の第一法則って呼ばれてるけど、400年前はエネルギーの正体って目に見えないし、quantitas motus (運動の量)だとか、vis viva (生命の力)とか呼ばれたり、謎の神秘的な”何か”だって思われてたんだよね。
総和は等しい、というのがミソです。姿や形を変えても、エネルギーは常に一定です。何もないところからはエネルギーは生まれません。
具体的には生命や機械はエネルギーを消費するし、今この記事を表示しているPCやスマホには電気が必要です。そしてその逆も同じで、風車は風の動きを止めて電気に変える装置です。機械について話す時は、何かしらの比較のための指標が必要で、そのためにはエネルギーのことを考える必要があります。幸いエネルギーはややこしい数式や難しい概念ではなく、どのようなものであっても同列に表すことができます。
なんとなくわかるけど、、、結局ジュールって何!?大丈夫です。今は取り敢えず名前だけでOKです。ゆっくり説明していきますので、これを使って、色々なエネルギーについて見ていきましょう!
エネルギーの単位
エネルギーは文字通り”仕事量”だ!力とエネルギーの関係
ジュールの正体とはズバリ、”どれぐらいの量の仕事をしたか” です。例えば荷物を載せた台車を押すような状態をイメージしてみてください。
この時仮に、店員さんは “1N (ニュートン)”という強さで台車を押していたとします。そして、この強さで1m荷物を押した時のエネルギーが1Jです。なので、1N x 1m = 1Jになります。荷物の重さには関係なく、実際に使った力で決まります。これが力学的エネルギーの正体です。
1N って結局なんだよってツッコミがきそうですが、今は”力の強さ”って覚えてください。
大体100gぐらいの重さのものを、手のひらに乗せた時に感じる重さ = 1Nです。
重さそのものではなくて、”あくまで感じる力の強さ”なので気をつけてくださいね。
(詳細はのちほど!重力の記事でまた説明したいと思います)
1N~大体100gの重さ、、、ってじゃあ重さと同じなの!?って勘違いされそうですが、ちょっと違います。上の図を見てみてください。例えば:
- 1kgの荷物を台車に乗せて運んだ場合: 1N
- 10kgの荷物を台車に乗せて運んだ場合:10N
- 1kgの荷物を地面に置いて無理やり押した場合: 10N
この場合だと、同じ荷物の重さでも、運び方が大変だとより重く感じるし、同じ運び方でも重量が重いと、押すのにたくさん力が必要!と感じるはずです。この“大変さ”、がN、ニュートンです。もちろん軽い力でも長い距離押し続けるとたくさんのエネルギーを使います。
たしか消費カロリーもエネルギーだよね?知ってるよ~。1kcal ってたしかすごいエネルギー量だった気がする、、、ダイエットが中々成功しない理由だよね。
そうそう!
消費カロリーは実はジュールと全く同じです。ちなみに 1kcal = 4184J なので、10Nの力で418m荷物を押したら1kcal運動できる計算になります。 (1kcalのエネルギー量って予想よりかなり多いのではないでしょうか)
単位時間当たりエネルギー = パワー
エネルギーや仕事量について分かったところで、次は”パワー”について見ていきましょう。
お?ついに俺の出番か!?パワーなら任せとけよな。馬力のことだろ??
。。。間違ってないです!正解!(汗
パワーって馬力のことそのものです。正確には”時間当たりにどれだけの仕事量がこなせるか”がパワーの定義なので、たくさんパワーがあると、より速く仕事が終わる!とも言えます。
りゅうた君の言う通り、実は車の馬力っていう単位はパワーを表しています。1Jがエネルギーの単位なら、1秒あたりに1Jの仕事が終わる単位をパワーと予備、”W”(ワット) で表します。それでは先程の荷物を再び見てみましょう。
荷台を一定の力、速度で押しながら、一定の距離を移動した時に消費するエネルギーと必要なパワーを見てみましょう。
- 1kgの荷物を台車に乗せて、1Nで1000m押した場合: 1N x 100m = 1000J
- 1kgの荷物を台車に乗せて、2Nで500m押した場合: 2N x 500m = 1000J
一見2Nで押すほうがたくさんエネルギーを消費しそうですが、距離が半分だとエネルギーは一緒になります。しかし荷物を運ぶのに使った時間も見てみましょう。
- は時速1kmなので、1000m移動するのにちょうど1時間
- は時速10kmなので、1000m移動するのには6分、500m移動するには3分
この時のパワーを比較すると、下記のようになります。
- 1時間=60分=3600秒。パワーは1000J/3600s=0.277W
- 分=180秒。パワーは1000J/180s=5.55W
なんと、消費エネルギーは同じでもパワーは20倍にもなります。全然違いますよね。これが仕事量とパワーの違いで、パワーはより大きな力、あるいはより速い速度で仕事をすると大きくなります。一方で仕事量は力が大きいほど大きくはなりますが、移動距離や時間も関わってくるため、たとえ小さい力でも、長い時間動かしたほうが大きくなる場合もあります。
ここでひとつ面白いことに気づくと思います。Jだけで見ると、速度は仕事量とは関係ありませんが、Wで表現すると下記のように表すことができます。1Wは1Nの力で1m/sの速度で押し続ける、ということとも同義になるのです。
速度か力が大きいとパワーが大きくなる、ということがよく分かると思います。
100m走で全力疾走すると息切れするけど、たくさんカロリーを消費してダイエットしたいならゆっくりでも長い時間走ったほうが痩せる、、、ということです。消費エネルギーが大きいからなのですね!
ちなみに車で言う”1馬力”は大体735W、エアコンぐらいです。何トンもある車体を動かすには大きなエネルギーが必要なんです、、、
俺のRX-7は400馬力あるけど、大型トラックも同じぐらいらしいぜ。。。パワーが同じってことは、これって同じなんかな?トルクは全然違うけど
同じです!
ただし力 “N”が大きいか、速度”m/s”が速いかの違いがあります。でもパワー自体は同じなのです。(トルクについてはまた次の機会に。)
これだけ力が違っても、パワーは同じ!
1N (ニュートン):力の大きさ
1J (ジュール):1Nの力で1m荷物を移動した時のエネルギー、仕事量
1W (ワット):1Jの仕事量を1秒で終わらせるパワー
1W = 1J/s = 1Nm/s
運動エネルギーと位置エネルギー
記事の最初のほうで、エネルギーはどんな形でも変換できる、と述べました。例えば:
- 運動エネルギー e = 1/2mv2 = 0.5 x 質量 x 速度2:ある速度で動いている物体が持っているエネルギー。その速度に到達するまではある力で押し続ける必要があり、その押した分だけのエネルギーが”速度”という形で蓄えられています。
- 位置エネルギー e = mgh 質量 x 重力加速度 x 高さ:高いところにある物体が持っているエネルギー。その高さに到達するまでは重量に逆らって押し続ける必要があり、その押した分だけのエネルギーが”高さ”という形で蓄えられています。
これらは本質的には荷物を押して移動させるのと同じことです。なぜならば止まっている物体を動かすのにはエネルギーが必要だし、逆に動いている物体からエネルギーを取り出すこともできるからです。もう少し詳細に見てみましょう。
運動エネルギーの正体
物体に速度を与えるためには、力を加える必要があります。再び荷台で考えてみましょう。
“1kgの荷台を静止した状態から1Nの力で加速させ続け、1m/sの速度になるまで押し続けた。その間に荷台は0.5m移動した。”
この場合のエネルギーは1N x 0.5m =0.5Jです。荷台には0.5Jのエネルギーが与えられました。摩擦などの損失がなければ押せた分がそのまま荷台の速度として変換され、”運動エネルギー”が与えられたことになります。
一方で荷台が持っているエネルギーは1/2mv2、つまり0.5 x 1 x 1 2 = 0.5 J
このようになり、与えられたエネルギーと運動エネルギーの式が一致します。さらに加速度について考えると、1m/sまで1秒で加速させる加速度は1m/s2ですが1kgの物体を1m/s2で加速するのに必要な力が1N、これがニュートンの本当の正体です。どうでしょう??一見難しそうなジュールやニュートンも実は身近なメートルや秒、キログラムの組み合わせに過ぎない単純な単位なんです。
物体に与えたエネルギー = 物体が与えられた運動エネルギー + エネルギー損失 [J]
しかし現実世界では、こうはいかないですよね。この式だと1Nの力で押し続けると無限大に物体が加速してしまいます。でも実際にはそんなことはありません。物体を動かそうとすると、摩擦や空気抵抗等があるため、押すのに使ったエネルギーがすべて運動エネルギーに変換されるわけではありません。失われたエネルギーは熱や振動し変換され、形を変えていく、という分けです。ただし形は変わっても、あくまで単位はJです。これを”エネルギー損失”と呼びます。
位置エネルギーの正体
ここまで読んでくれた方はもうお分かりかもしれません。
1Nの力に逆らって、高さ1mまで物体を移動すると、1Jのエネルギーを消費します。つまりそれだけの位置エネルギーが蓄えられます。これが位置エネルギーです。
地球上の重力は一定で、1kgの物体に対しては、9.81Nの力が加わります。これが重力の力の大きさであり、”重量加速度” とも言われたりします。冒頭で1Nは大体100gの重さと同じ、と述べたのはこういうことなのですね。大切なのは、この力の大きさは向きとは関係なく、ニュートンはあくまでニュートン、と表せることです。
・力の単位は水平に押しても、上に持ち上げても、1Nは1N
・1kgの物体を1m/s2で加速する時の力の大きさ = 1N
・地球上では重力によって1kgの物体にかかる力は9.81N
色々なエネルギーの種類
ここまで取り扱ってきたエネルギーは”力学的エネルギー”と呼ばれていたりします。なぜなら物体を動かしたり、力をかけた時のエネルギー、すなわち”力学”に関わるエネルギーだからです。これ以外にも司る力が変わると変化する色々なエネルギーがあります。しかしいずれもJという単位に帰結することができます。
- 電気エネルギー:電磁気
- 化学エネルギー:電磁気
- 放射エネルギー:弱い相互作用
- 核エネルギー:核力
- 熱エネルギー:運動の一種
- 力学的エネルギー:運動の一種
- 重力エネルギー:重力
例:電気エネルギー
1W = 1J/s = 1VA (ボルトアンペア)
1クーロンは電子1.6×1019分の電子に含まれる電荷の量、1Vは電位差です。1VA = 1Wという式を覚えている方もいるかもしれません。これも立派な1Jで、箱を押すのと全く同じエネルギーです。
よく電力使用量の単位で”1kWh”(キロワット時)というのが登場しますがこれは”1時間(1 hour)の間1kWのパワーを発揮した時のエネルギー”という意味です。
つまり1kWh = 3600kJ (キロジュール) という意味になります。 (1kJ = 1000J)。
食べ物に例えると747kcalにも匹敵するので、かなりのエネルギーですよね。
このような考え方でどのような単位系でも基本の単位さえ抑えておけば、変換することができ、また組み合わせによって新しい単位を生み出すことも可能です。これを”次元解析”や導出課程の理論を”バッキンガムのπ定理”なんて呼んだりします。
基本単位系は素量とも言われSI方におけるISO規格で定められています。長さ(m)、時間(s)、質量(kg)、電流(A)、温度(K)、物質量(mol)、光度(cd)の7種類でどのような物理量を表すこともできます。
プランク定数 (h: Js) やボルツマン定数 (k=J/K) のような物理定数も基本単位で表すことができる、、、これは世紀の大発見だ!我が次元解析に、、、死角なし!
次元解析はすごく便利ですが、いきなり説明するには難しいので、また違う機会にしたいと思います。今は、どんな形のエネルギーでも変換ができる、ということだけ理解頂けたらと思います。
色々なもののエネルギー/パワーの大きさ
さて、ついに本題(あるいはオマケ)です。。。ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。1Jがどれぐらいの力なのか、というイメージ感が掴めたところで、世の中に存在するもののエネルギーがどれぐらいあるのか、見てみましょう!
JやWですが、値が大きくなると、読みづらくなってしまいます。1000000000W!!!とか。なので、一般的に1,000J = 1kJ (キロジュール), 1,000kJ = 1MJ (メガジュール)と表現します。Wも同じで、1,000W = 1kW (キロワット), 1,000kW = 1MW (メガワット)です。
エネルギーのランキング!
単3乾電池一本に含まれる電気エネルギー:3600mAh x 1.2V = 4.32Wh = 15.5kJ
白米のお茶碗一杯のエネルギー:約200kcal = 840kJ
フルマラソンの消費カロリー:2,000~4,000kcal = 8.4MJ ~16.8MJ
ガソリン1kgに含まれる熱エネルギー:44MJ/kg、あるいは33MJ/L
フルマラソンの消費カロリーがガソリン0.5L分ぐらいなんだね、、、
ってことは人間の燃費はリッター80kmもあるの!?すごい
人間は非力な分、野生動物と比べても特に持久力があることで有名だよね。自転車になると同じ距離でも消費カロリーは1/3ぐらいになるから、実は自転車は究極のエコな乗り物なんですよ。
落雷のエネルギー:5 x 103 (5,000) MJ
旅客機が飛行中に持っている運動エネルギー: 0.5 x 200,000kg x 300m/s2 = 1.8 x 104 (18,000) MJ
原発一基の年間発電量:1000MW x 3600 x 24 x 365 = 3.1 x 1010 MJ
日本人が1年間に消費する食事の摂取カロリー:2500kcal x 4.2 x 365 x 100,000,000 = 3.8 x 1011 MJ
マグニチュード8.0の地震のエネルギー:6.3 x 1013 MJ
旧ソ連最大の水爆のエネルギー:50MT(メガトン) = 4200 x 50 x 109 = 2.1 x 1014 MJ (広島原爆の3000倍)
どうでしょう!?なんと日本人が食事で摂取しているカロリーは原発12基分にも匹敵します。すごいエネルギーですよね!
しかし水爆ともなると私達の日常で使う運動エネルギーや電気エネルギーとは違って、核エネルギーのため単位が地球レベルになってきます。いかに危険なものかわかると思います。
人間の作り出せるエネルギーはこのぐらいです。でも自然界はもっと遥かに大きなエネルギーを持っています。
太陽が1日に発生するエネルギー:3.846 x 1026W x 3600 x 24 = 3.3 x 1031 J
超新星爆発のエネルギー: 0.1 ~ 5.0 foe (1 foe = 1044 J です。あまりにも大きいため略して表現されます。)
ブラックホールが衝突した時のエネルギー:推定109 ~1012 foe
その他の変わったエネルギー:
- 小さなエネルギー:1eV 電子1個が1Vの電位差を通過するエネルギー:1.6 x 10-19
- 真空エネルギー (一切の物質的エネルギーを伴わず、量子力学的ゆらぎのみによって発生しうる空間の最小限のエネルギーの単位):10-9 J/m3
- プランク定数により予測された真空エネルギー :10113 J/m3
信じがたいかもしれませんが、真空エネルギーは極めて未解明で、予測値はなんと10121 J/m3もばらつきがあります。Cosmic Constantの矛盾とも言われ未だ研究中です。恐ろしいですね、、、
もはやイメージもできなくなってきちゃいましたね。。。私もです笑
ブラックホールの衝突は、この宇宙で起きうる出来事で最も巨大なエネルギーを発生させると言われており、もはや人類の想像を超えています。
これ以上のエネルギーとなると、一体何があるのでしょうか?
気になる方は次のページへ!
全宇宙のエネルギー
ついにきました。ラスボスです。次項へどうぞ!
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