自動車・鉄道

【流体力学】風洞の入門(前編)

はじめに

まず最初に、みんなは風洞や空力と言えば何を思い浮かべるかな?

そりゃやっぱ飛行機の開発とか、車の空力のイメージがあるよな!

空力はもちろん、冷却や騒音、流れが関係することすべてにおいて重要だと思います。。。!

どれも正解!本日は様々な製品の開発に欠かせない風洞について、その仕組みと主な方式を紹介していくぞ。

都市部の風の流れを確認するための試験模型

今回の記事の趣旨:管理人は実は流力は専門外なのですが、縁あって風洞試験に携わる機会がありました。せっかくだったので、予習した内容についてピックアップさせて頂きます。

この記事はこういう人向け

  • 風洞の概要について知りたい
  • 風洞がどのような装置なのか知りたい
  • 今回の記事のレーティング:3 out of 5 stars

車体の空力については、以前記事を書いているので、気になる方はこちらもご覧になってみてくださいね。

風洞とは (風洞の基本)

風洞とは:風を流すことで物体に作用する抗力(空気抵抗)や揚力(浮き上がる力)など様々な特性を計測する装置のことです。

風洞の歴史は古く、1700年代初頭には簡易的な風洞による試験が開始していたとされています。写真のものはライト兄弟が用いたとされる風洞の複製で、100年以上もの昔から風洞が使われていたことが分かります。

風洞の主要方式:

風洞の部類として、流れが循環する循環回流型(ゲッチンゲン型) と、入り口と出口が開放されたオープン型(エッフェル型) が存在します。循環型はエネルギー効率に優れるため連続運転に向いていますが、建設費がかかります。オープン型は超大型風洞や、安価な研究用小型風洞などによく使用されます。

ゲッチンゲン型風洞の基本構造

低速風洞でよく用いられる循環回流型風洞の主な構成です。それぞれの部分について見ていきましょう。

ファン

流れを作り出す部分です。直接風を作り出すタイプのものもありますが多くは圧力型です。多段式の軸流ファンで圧力を生み出し、下流に設置されたノズルで増速を行います。大型のものでは数万kWの動力を必要とし、専用の発電所が併設されます。

見た目もパワーもジェットエンジンのような巨大装置です!

熱交換機

ファンの動力が大きい場合、どうしても温度が上がってしまうため、流れを冷却するために使われます。また形状を工夫することで、整流の役割も兼ねています。このようなプレートフィン型のものがよく使われます。

ベーン・整流部

ファンで発生した流れを整流する部分で、風洞の最も大事な機能です。整流ベーンやメッシュ、ハニカムなど様々な要素を組み合わせて、極力均一流を作り出します。

ノズル

縮流筒とも呼ばれ、ファンで発生した圧力を流速に変換します。また、整流の役割を担っており、整流部で作った流線を乱さず密に束ねる役割ももちます。

超音速風洞では上図のように、ノズル部が超音速ノズル形状となっています。流量を制御するスロートの役割も兼ねています。

テストセクション

測定物と荷重を測定する天秤が入る部屋です。測定物のことをモデルや模型と呼び、それを支える支持構造及び力を測定する部分が天秤です。

天秤

天秤は床から支持する方式、天井からトラバースで吊る方式、自動車ではハブを直接支える方式など様々あります。高精度な分力計が内蔵されており、上下前後左右3方向の力とモーメントの測定ができます。また、天秤自体を動かして試験中に模型の姿勢を変えることができるものもあります。

支持構造そのものが測定物に与える影響を最小限にするために、特に航空機ではこのように後ろのほうで支持することも多いです。

ディフューザー

テストセクションを通り抜けた後、主流路に風を戻すためのダクト。速い流速の流れを静圧に変換し減速させます。テストセクションからディフューザーへ誘導する吸い込み口のことをコレクター (Collector)と呼ぶこともあります。また、ファン後流も極力整流部での流速を下げるため、多段式のディフューザーやベーンが設置されます。

下記に風洞の基本構造から運転方法まで紹介した分かりやすい動画があります。(字幕オンで日本語字幕で見れます)

ファンばっかりのイメージがあったけど、いろんな部品があるんだな

普段写真とかで目にするのはファンやテストセクションだけだもんね。全体としては巨大な装置なんです。

風洞の種類と役割

風洞の種類には、方式以外にも流速別で分類をすることがあります。

低速風洞

音速以下で利用される最も広く普及している風洞の基本形です。航空機はもちろん、自動車、鉄道、ビルの騒音や空調機器、ロードバイク等、空気が関わるほとんどの産業で幅広く活用されています。

ファンを駆動して風を生み出すため、連続的に運転をすることができ、多くのデータを取得することができます。また大型化しやすく、1:1スケールでの模型試験が可能なものもあります。流速や模型サイズに応じて後述するオープン型とクローズド型が存在します。

流速は低いものの、モノによっては800km/h以上を出すこともできたり、テストセクション断面積が大きなものでは数十MWの動力を必要とします。そのため、専用の動力源(ガスタービン機関)が併設されることも少なくありません。

遷音速風洞

マッハ数1以上までの流速に対応した航空機用風洞です。テストセクション直前がスロートとなっており、音速以上の流速を出すことが可能です。大きなエネルギーが必要なため、小型のものが多いですが、フルスケールに対応したものも存在します。米国のPWT16Tや防衛装備庁の千歳試験場などが代表例です。

航空機だけでなく、遷音速域での衝撃波の調査などに使われることが多く、研究用としても多く利用されています。スケールの小さなものが大学の研究室などに設置されます。

超音速風洞

マッハ数3~20以上を流すための特殊な風洞で、宇宙機や弾道弾、超音速機、バルブなどの超音速流が発生する試験に使用されます。

流速が非常に速くファンで風を作ることが不可能なため、圧縮空気や真空引きなどで流れを作ります。このため連続運転を行うことができず、試験回数が減ってしまうのがネックです。また極めて大きな動力が必要なため、小型の装置が主流です。

下記のサイトでそれぞれが分かりやすく紹介されているので、もっと知りたい方は見てみてくださいね

https://www.aero.jaxa.jp/spsite/wind-tunnel/001.html

https://www.aero.jaxa.jp/facilities/windtunnel/

特殊風洞

空力諸元を測定するのが主な目的である上記一般風洞に対して、騒音測定に特化したもの、低温や雨などを再現できる環境試験用のもの、温度や内部の圧力を変化させたり極低圧状態を作れるもの、極低温冷却気を流すことでレイノルズ数を調整可能なものなど、様々な特殊な風洞が存在します。

プラズマ加熱風洞https://www.aero.jaxa.jp/facilities/windtunnel/facility07.html

今回は一般的な低速風洞に絞って解説をして行きます。

なんだー、今回は普通のショボい風洞かよ~

低速風洞は実は一番簡単なようで、精度要求が高かったり、高速流に比べて動圧が変動しやすかったり、難しい点がたくさんあるんだ。

遷音速風洞はかなり専門的な知識が必要だし、汎用性故に計測精度は犠牲になっているものも少なくない。いきなりアドバンスドなものから入るより基本形である低速風洞をまずマスターしてほしいと思うぞ。

次へ (風洞の方式)

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Trude (まきブロ管理人)
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